60代になると、「できるだけ働いて収入を確保したい」という気持ちと、「税金や社会保険の負担はなるべく軽くしたい」という願いが、同時に出てきます。
年金の受給をいつから始めるか、どんな働き方を選ぶかは、その後の生活に大きく影響します。しかも2025年からの税制や非課税ラインの条件は、以前より複雑になっているため、うっかり計算ミスをすると「せっかく働いたのに手取りが減る」という事態も起こりえます。
この記事では、「H2:働き方と受給開始のベストミックス」から実践的な方法を解説します。
厚生年金加入の有無や勤務時間の調整、複数収入源の組み合わせ方など、あなたの状況に合わせた選択肢を具体的に見ていきましょう。
働き方と受給開始のベストミックス
厚生年金に入らない働き方は得か損か?
厚生年金に加入すると将来の年金額は増えますが、現役の間は保険料負担が大きくなります。例えば、月収10万円の場合、本人負担の厚生年金保険料は約9,000円。年間で10万円以上の負担です。
一方、加入しない働き方を選べばその負担はゼロになりますが、将来の年金額は上がりません。「今の手取りを優先するか、将来の受給額を増やすか」の判断が必要です。
アドバイス:
- すでに十分な老齢基礎年金・老齢厚生年金が見込める場合は、非加入の選択肢も有効
- 年金額が少ない人は、65歳まで厚生年金に加入して上乗せを狙うのも手
時短勤務・シフト調整で非課税ラインを守る
住民税非課税世帯の基準(例:東京都23区で単身の場合、年収約100万円以下)を超えるかどうかで、介護保険料や医療費負担が変わります。
シフトを少し減らして非課税ライン内に収めれば、手取りの減少以上に負担軽減が期待できる場合があります。
アドバイス:
- 年間の見込み収入を早めに計算し、12月前に調整
- 「あと1日休む」だけで住民税や社会保険料がゼロになるケースもある
会社との交渉で再雇用条件を有利に
再雇用の契約条件や社会保険加入の有無は、会社との交渉次第で変わることがあります。
週30時間未満に調整して社会保険非加入にする、賞与の有無を見直すなど、働き方を柔軟にできる可能性があります。
アドバイス:
- 契約更新時に条件を見直すタイミングを活用
- 人事部や上司に「税金・社会保険負担を減らすための働き方」を相談
複数収入源で安定と節税を両立
年金、パート収入、さらに年金以外の副収入(例:ネット販売、原稿料)を組み合わせれば、1つの収入が減っても全体の安定感を保てます。
副収入は事業所得や雑所得になるため、経費計上できる場合があり、課税所得を抑える効果もあります。
アドバイス:
- 年金以外の収入は「経費を引いた後の所得額」で非課税ラインを判断
- 小規模で始めて収入の柱を増やす
解決策・具体的アドバイス
年間所得の“設計図”を作る
収入・年金・控除額を一覧にして、「手取り」を基準に計画します。
表計算ソフトで月別収入と控除を入力し、年末時点の見込み額を把握しましょう。
モデルケース早見表
(例:単身、東京都23区、65歳以上の場合)
| 年金受給開始 | 就労収入 | 年間手取り(概算) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 60歳開始 | 80万円 | 約150万円 | 非課税ライン内 |
| 62歳開始 | 100万円 | 約160万円 | 住民税軽減あり |
| 65歳開始 | 120万円 | 約170万円 | 保険料負担増 |
※表の見方:年金+就労収入から税・保険料を引いた金額。地域や扶養状況により変動。
この早見表は、「年金をいつから受け取るか」と「働いて得る収入の額」によって、年間の手取りがどう変わるかを比較したものです。
たとえば「60歳開始|80万円|約150万円」という行は、
- 60歳から年金を受け取り始める
- 年間の就労収入が80万円
という条件で働いた場合、税金や社会保険料を差し引いたあとの手取りがおよそ150万円になるという意味です。
「備考」欄は、その条件で受けられる優遇や注意点を簡単にまとめています。たとえば「非課税ライン内」とあれば、住民税や所得税がかからず、医療費や介護保険料が軽減される可能性があります。「保険料負担増」とある場合は、厚生年金や健康保険の保険料を払う分、手取りが減る可能性があるということです。
大事なポイントは、この表はあくまで「東京都23区・単身・65歳以上」という前提条件で計算されていること。お住まいの地域や扶養の有無によって金額や判定は変わります。目安として活用し、実際の数字はご自身の条件で計算してみてください。
すぐに取り組める準備
- 年金見込額を「ねんきんネット」で確認
→ 年金額の予測がわかれば、働く時間や受給開始年齢をより正確に決められます。 - 就労時間・年間収入を早めに試算
→ 年末直前では調整が難しいため、春〜夏のうちに見込みを出すことが重要です。 - 住民税基準額を自治体HPでチェック
→ 地域ごとに基準額が違うため、全国共通の金額で判断すると誤差が出ます。
「まだ時間があるから…」と思っていると、あっという間に年末になってしまいます。早めの確認は“節税という安心”を手に入れる第一歩です。今の生活に無理をかけず、計画的に収入調整ができます。
専門家や制度の活用
- 年金事務所で受給開始年齢の試算を依頼
→ 無料で、複数パターン(60歳・62歳・65歳開始など)を比較できます。 - 社労士に社会保険加入条件を相談
→ 就労条件と保険料負担を照らし合わせ、もっとも効率の良い働き方を提案してもらえます。 - 自治体の税務相談で非課税判定の確認
→ 「非課税世帯」に該当すれば、医療費や介護費用の負担が軽くなる可能性があります。
制度の説明を読んでも難しいと感じるのは当然です。専門家や窓口は“困ってから行く場所”ではなく、“迷いがあるうちに行く場所”です。相談は無料の場合が多く、ちょっとした質問から始めても大丈夫です。
まとめ
「収入を増やす」「税金や保険料を減らす」の両立は、思ったより可能です。
重要なのは、“1年単位での見直し”を習慣にすること。制度や収入状況は変わるため、毎年のチェックが将来の安心につながります。
さらに一歩踏み出すためのヒント:
- 年の途中でも収入計画を調整できるよう、毎月の収入を把握する
- 家計簿やアプリを活用して「手取りベース」での収支を記録する
- 制度改正の情報は年に数回チェックする
今の選択が、これからの数年間の生活を大きく左右します。焦らず、しかし着実に、自分に合った「働き方と年金の黄金バランス」を見つけてください。


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